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ブログ HITOGATA   in Otaru       by摩耶

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2010年 05月 20日

素象人形と彫刻の違い

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                                                     「羅 漢」


 以前初めての個展を開催した際、新聞社からの取材で「摩耶さんは彫刻家ですか?それとも人形作家なのですか?」と一番最初に聞かれました。 「素象人形展」と冠しているにも関わらず、尋ねるということは 記者の方は私の作品を人形と呼ぶ事に納得していなかったのかもしれません。 確かに素象人形は彫刻家小林止良於氏が創始者。 デッサンに正確な素象人形に記者がそれまでご覧になった手足が小さい可愛らしさを求めた お人形と違いを感じるのは当然の事です。 
 素象人形の「素」とは無地、飾らないこと、「象」とは心に浮かんだ姿、かたち。 素材は陶土で成形後、縮み割れを防止する為、中を空洞に貫き乾燥後、焼成して仕上げたテラコッタです。 初めて聞く方には理解が難しいかもしれません。 写真でもなかなか伝わらないので、実際に作品を見ていただきたいところです。

 では彫刻と素象人形の違いとは何か、今日は私なりの考えを述べたいと思います。 彫刻は全身、首、胸像とありますが、すべて屋外、または部屋空間を宇宙とします。 それに比べて素象人形は床の間、あるいはリビングボードの上などの空間が宇宙。 彫刻は内包するエネルギーがあるとしても、それは外に向けて発信されるものであり、素象人形は内にその情感を秘め、見るものに共感させるのです。 ある人が「彫刻は裸で人形は服を着ているのが違うところだ。」と言っていましたが、これは少し違います。 私が思うに、着衣彫刻はその衣服の下に筋肉の存在を示しているのです。 また裸体の素象人形があったとしても、それは肌を強調する事はなく、情という衣を纏って完成していることでしょう。 彫刻は衣服があっても限りなく肉体に迫り、また逆に素象人形は裸体に肉薄する事はありません。

 素象人形は私にとって立体の詩。 文字はないけれど、作者の想いを素象人形という媒体を介して御覧下さる方に届けたい・・・そう思って制作しています。 「色がないのは人形じゃない」と言われることも多いですが、色は限定した世界を作り上げてしまいます。 付けないことで、よりイメージを拡げる事が出来、作品を奥深く感じていただきたい。 お人形にない「内面の美」、彫刻にない「手頃の美」、素象人形をそんな風に受け入れていただけたらと思います。

ー追  記ー
彫刻家 小林止良於氏の芸術人形論の記事
人形に問う
芸術人形指向 <上>
芸術人形指向 <中>
芸術人形指向 <下>











by Blog_Maya | 2010-05-20 16:37 | 素象人形


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